
緊急車両との交通事故では、一般車同士の事故とは異なる交通ルールが適用されるため、過失割合の考え方も異なります。
一般的な交通事故と同じように考えていると、なぜ自分のほうが過失が大きいのか納得できない人もいるでしょう。
緊急走行中の救急車や消防車、パトカーには、赤信号での交差点への進入や最高速度などについて交通ルールの特例が認められています。
そのため、一般車側の過失が大きくなる事故も少なくありません。
ただし、緊急車両だからといって常に同じ過失割合になるわけではなく、サイレンや赤色警光灯の使用状況、速度、事故が発生した状況などによって過失割合は変わります。
本記事では、緊急車両との交通事故の過失割合や過失割合が変わる要素、実際の判例、損害賠償の請求先などについて解説します。
・緊急車両との交通事故の過失割合は、一般車80:緊急車両20が基本(ただし、状況に応じて一般車と緊急車両それぞれの過失が加算・減算される)
・緊急車両との交通事故で過失割合が変わる主な要素は、サイレンや赤色警光灯を使用していたか、緊急車両が交差点に進入したときの速度、双方に速度超過などの交通違反がなかったか
・緊急車両に認められている交通ルールの特例は、赤信号でも交差点に進入できる、追い越しのために道路の右側部分にはみ出して通行できる、最高速度の特例が認められている
・緊急車両が接近してきたときに一般車が守るべき交通ルールは、道路の左側に寄って一時停止する、一方通行では状況によって道路の右側に寄って進路を譲る
緊急車両との交通事故の過失割合|一般車80:緊急車両20が基本
交差点で緊急走行中の緊急車両と一般車が衝突した場合、基本過失割合は一般車80:緊急車両20です。
一般車の信号が青、緊急車両の信号が赤だったとしても、緊急車両が赤色警光灯をつけてサイレンを鳴らして緊急走行していれば、一般車側の過失が大きくなるのが基本です。
道路交通法では、緊急自動車が接近してきた場合、一般車には交差点を避けて一時停止するなど、進路を譲る義務が定められています。
また、緊急自動車には赤信号での交差点への進入など、通常の車には認められていない交通ルールの特例があります。
そのため、緊急車両が赤信号を無視したことよりも、一般車が緊急車両の接近に応じて停止・進路を譲らなかったことのほうが重く評価され、一般車の基本過失割合が高くなります。
ただし、80:20はあくまで基本過失割合です。
事故当時の状況によっては、一般車と緊急車両それぞれの過失が加算・減算されます。
緊急車両との交通事故で過失割合が変わる主な要素
緊急車両との交通事故では、基本過失割合をそのまま当てはめて最終的な責任が決まるわけではありません。
緊急車両が本来の方法で緊急走行していたのか、一般車がその接近を認識して進路を譲れる状況だったのかなど、事故当時の事情を踏まえて過失割合を判断します。
緊急車両との交通事故で過失割合が変わる主な要素を解説します。
- 緊急車両がサイレンや赤色警光灯を使用していたか
- 一般車が緊急車両を認識できる状況だったか
- 緊急車両が交差点に進入したときの速度
- 一般車が適切に進路を譲っていたか
- 双方に速度超過などの交通違反がなかったか
緊急車両がサイレンや赤色警光灯を使用していたか
緊急車両との事故では、事故当時にサイレンを鳴らし、赤色警光灯をつけていたかが過失割合を判断する重要な要素になります。
道路交通法施行令第14条では、緊急自動車が緊急の用務のために運転するときは、原則としてサイレンを鳴らし、赤色警光灯をつけなければならないと定められています。
そのため、サイレンを鳴らしていなかった、赤色警光灯をつけていなかったなど、緊急自動車として必要な要件を満たしていなければ、緊急走行中の車両を前提とした一般車80:緊急車両20の基本過失割合は適用されません。
反対に、サイレンと赤色警光灯を適切に使用して緊急走行していた場合は、一般車に進路を譲る義務が生じるため、一般車側の過失が大きくなるのが基本です。
一般車が緊急車両を認識できる状況だったか
一般車が緊急車両の接近を認識できる状況だったかも、過失割合を判断する重要な要素です。
サイレンを鳴らして赤色警光灯をつけていたとしても、建物などで見通しが悪い交差点では、緊急車両を確認できるタイミングが遅くなることがあります。
緊急車両の接近を認識してから停止したり進路を譲ったりする十分な時間がなかったのであれば、一般車に通常と同じ対応を求めるのは困難です。
そのため、緊急車両を認識できた位置や事故までの時間、交差点の見通しなどを踏まえ、一般車が進路を譲れる状況だったのかによって過失割合が変わります。
緊急車両が交差点に進入したときの速度
緊急車両が交差点へ進入するときに徐行していたかも、過失割合を判断する重要な要素です。
道路交通法第39条第2項では、緊急自動車が交差点へ進入するときは、他の交通に注意して徐行しなければならないと定められています。
赤信号でも交差点へ進入できる特例はありますが、徐行する義務まで免除されるわけではありません。
そのため、赤信号の交差点へ十分に減速せず進入したなど、緊急車両が徐行義務を守っていなかった場合は、緊急車両側の過失が大きくなる要素になります。
反対に、十分に速度を落とし、周囲の交通に注意しながら交差点へ進入していたのであれば、その点について緊急車両側の責任が加算される理由にはなりません。
一般車が適切に進路を譲っていたか
一般車が緊急車両の接近に気づいたあと、適切に進路を譲っていたかによっても過失割合は変わります。
道路交通法第40条では、緊急自動車が接近してきた場合、交差点やその付近では交差点を避けて道路の左側に寄り、一時停止しなければならないと定められています。
交差点以外では、道路の左側に寄って進路を譲らなければなりません。
一般車が緊急車両を認識できたにもかかわらず、そのまま走行を続けたり進路を妨げたりして事故につながった場合は、一般車側の過失が大きくなります。
一方、法律に従って進路を譲り、すでに停止している一般車へ緊急車両が一方的に衝突したのであれば、一般車0:緊急車両100となることもあります。
緊急車両との事故だから一律に一般車の過失が大きくなるのではなく、事故が発生するまでに一般車がどのような対応をしていたかも重要です。
双方に速度超過などの交通違反がなかったか
一般車と緊急車両の双方に交通違反がなかったかも、過失割合を判断する要素になります。
たとえば、一般車が制限速度を大幅に超えて走行していたため、緊急車両に気づいても十分に減速できず衝突したのであれば、一般車側の過失が大きくなる要因です。
一方、緊急車両には最高速度などの特例が認められていますが、すべての交通ルールが免除されるわけではありません。
緊急走行中であっても適用される交通ルールに違反し、その違反が事故につながったのであれば、緊急車両側の過失が大きくなります。
そのため、緊急車両との事故では一般車だけでなく、双方の運転に事故の原因となる違反がなかったかを踏まえて過失割合を判断します。
緊急車両との交通事故に関する判例
緊急車両との交通事故では、一般車に進路を譲る義務がある一方で、緊急車両にも周囲の交通に注意して安全に走行する義務があります。
そのため、緊急車両との事故だからといって、必ず一般車側の責任が重くなるとは限りません。
実際の裁判でも、サイレンの使用状況や交差点への進入方法など、事故当時の状況を踏まえて責任が判断されています。
緊急車両との交通事故について実際に争われた判例を紹介します。
- 青信号の一般車と赤信号の救急車が衝突した事例
- サイレンを鳴らしていないパトカーと一般車が衝突した事例
- 緊急走行中の救急車の運転者にも刑事責任が認められた事例
青信号の一般車と赤信号の救急車が衝突した事例
青信号で交差点へ進入した一般車と、赤信号で交差点へ進入した救急車が衝突し、双方の過失が争われた事例です。
この事故では、一審と控訴審で過失割合がほぼ逆転しており、緊急車両との事故では信号の色だけで責任を判断できないことがわかります。
【事故の概要】
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【事故の結果】
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大阪高等裁判所は、一般車が少し注意していれば救急車を早い段階で発見でき、停止して事故を回避できたことを重く評価しました。
一方、救急車にも過失がなかったわけではありません。
赤信号で交差点へ進入する際、青信号で接近していた一般車に気づかないまま進入しており、道路交通法第39条第2項で求められる他の交通への注意が不十分だったと判断されています。
そのうえで、救急車がサイレンを鳴らして徐行していたことや、一般車には緊急自動車へ進路を譲る義務があることなどを踏まえ、一般車側の責任がより重いと判断されました。
青信号だから一般車の責任が軽くなるとは限らず、緊急車両を認識して事故を回避できる状況だったかが過失割合を大きく左右した判例です。
サイレンを鳴らしていないパトカーと一般車が衝突した事例
赤色警光灯をつけていたものの、サイレンを鳴らさずに赤信号の交差点へ進入したパトカーと、青信号で進入した一般車が衝突した事例です。
この裁判では、パトカーが緊急自動車として必要な方法で走行していなかったことから、一般車には過失が認められませんでした。
【事故の概要】
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【事故の結果】
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この事例のポイントは、赤色警光灯をつけているだけでは、緊急走行中の緊急自動車として扱われないことです。
パトカーは緊急配備のために走行していましたが、事故当時はサイレンを鳴らしていませんでした。
そのため、赤信号で交差点へ進入できる緊急自動車としての特例を受ける前提を満たしておらず、青信号に従って走行していた一般車には過失が認められませんでした。
緊急車両との事故では、車両の種類だけで判断するのではなく、事故当時に赤色警光灯とサイレンを適切に使用し、緊急走行の要件を満たしていたかが重要だとわかる判例です。
緊急走行中の救急車の運転者にも刑事責任が認められた事例
赤信号の交差点へ進入した緊急走行中の救急車と、青信号で交差点へ進入した一般車が衝突し、救急車の運転者にも刑事責任が認められた事例です。
一般車側には酒気帯び運転や大幅な速度超過がありましたが、裁判所は、救急車側にも交差点への進入方法に問題があったと判断しました。
【事故の概要】
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【事故の結果】
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裁判所は、緊急自動車には赤信号でも交差点へ進入できる特例がある一方、他の交通に注意して徐行する義務までは免除されないと判断しました。
救急車の運転者は一度右方を確認していましたが、その後は再確認せずに交差点へ進入していました。
見通しが十分ではない状況だったことから、交差点へさらに進入する際に右方を改めて確認していれば、事故を避けられた可能性があったとされています。
一方、一般車側は酒気帯びに加え、制限速度を大幅に超えて走行し、衝突直前まで救急車のサイレンや赤色警光灯に気づいていませんでした。
そのため、裁判所は一般車側の過失のほうが大きいと評価しています。
緊急走行中であっても、安全確認を怠って事故を起こせば、緊急車両の運転者自身が刑事責任を問われることを示した判例です。
緊急車両との交通事故では誰に損害賠償を請求する?
緊急車両との交通事故では、相手が個人ではなく、国や自治体などの公的機関になることがあります。
たとえば、救急車や消防車であれば自治体、パトカーであれば国や都道府県などが損害賠償の請求先になるのが基本です。
緊急車両の種類ごとに、誰へ損害賠償を請求するのかを解説します。
- 救急車や消防車との事故では自治体などに請求する
- パトカーとの事故では国や都道府県などに請求する
- 保険会社が対応しない場合は国や自治体などと直接交渉する
救急車や消防車との事故では自治体などに請求する
消防署が運用する救急車や消防車との事故では、原則として、その消防機関を設置・運営している自治体などに損害賠償を請求します。
公務員である救急隊員や消防隊員が、職務中の運転で過失によって事故を起こした場合は、国家賠償法第1条第1項に基づき、国または公共団体が損害賠償責任を負うためです。
市が消防本部を設置しているのであれば市が請求先となり、複数の自治体で構成する一部事務組合などが消防業務を担っている地域では、その組合が請求先になることもあります。
そのため、救急車や消防車との事故では、まず車両を運用している消防機関と、その設置主体を確認する必要があります。
パトカーとの事故では国や都道府県などに請求する
パトカーとの事故では、その車両を運用している警察組織に応じて、国や都道府県などに損害賠償を請求します。
都道府県警察に所属する警察官が、職務中の運転で過失によって事故を起こした場合は、国家賠償法第1条第1項に基づき、原則として都道府県が損害賠償責任を負います。
たとえば、愛知県警察のパトカーとの事故であれば、愛知県が損害賠償の請求先です。
先ほど紹介したサイレンを鳴らしていないパトカーとの事故でも、パトカーを運転していた警察官個人ではなく、愛知県に対する損害賠償請求が認められています。
一方、国の機関に所属する公務員が職務中に事故を起こした場合は、国が損害賠償責任を負います。
そのため、事故を起こした車両がどの機関に所属しているのかを確認することが重要です。
保険会社が対応しない場合は国や自治体などと直接交渉する
緊急車両との事故では、相手側の保険会社が示談交渉の窓口になるとは限りません。
国や自治体などが車両の損害を自ら負担する仕組みを採用している場合は、事故を起こした車両を管理する国や自治体などが直接の交渉相手になります。
この場合、治療費や休業損害、慰謝料、車の修理費などについて、損害額や過失割合を国や自治体などの担当部署と交渉することになります。
相手が公的機関であっても、提示された過失割合や損害賠償額をそのまま受け入れる必要はありません。
事故状況や損害額について意見が一致しなければ、最終的には訴訟によって損害賠償を請求することも可能です。
緊急車両に認められている交通ルールの特例
救急車や消防車、パトカーなどが緊急用務のために走行するときは、一般車と同じ交通ルールをすべて守っていては、現場への到着が遅れてしまいます。
そのため、道路交通法では、緊急自動車に対して信号や通行方法、最高速度などに関する特例を設けています。
緊急車両に認められている主な特例と、緊急走行中でも守らなければならない義務について見ていきましょう。
- 赤信号でも交差点に進入できる
- 追い越しのために道路の右側部分にはみ出して通行できる
- 最高速度の特例が認められている
- 緊急走行中でも安全運転義務は免除されない
赤信号でも交差点に進入できる
道路交通法第39条第1項では、緊急自動車は緊急用務のためやむを得ない必要があるとき、道路交通法第7条の信号に従う義務などの規定を適用しないと定めています。
ただし、同法第39条第2項により、交差点へ進入するときは他の交通に注意して徐行する義務があります。
そのため、救急車や消防車、パトカーなどは赤信号でも交差点へ進めますが、周囲の安全を確認しながら徐行して進入しなければなりません。
追い越しのために道路の右側部分にはみ出して通行できる
緊急走行中の緊急車両は、前方の車を追い越すために、道路の右側部分(対向車線)にはみ出して通行することが認められています。
道路交通法第39条第1項では、緊急自動車が緊急用務のためやむを得ない必要がある場合、同法第17条第5項の右側通行の禁止に関する規定を適用しないと定めています。
そのため、一般車では道路の右側部分にはみ出して通行できない場所でも、緊急車両は必要に応じて右側部分を通行することが可能です。
最高速度の特例が認められている
道路交通法施行令第12条では、緊急自動車が一般道路を走行する場合の最高速度を時速80kmと定めています。
そのため、緊急走行中の緊急車両は、一般車とは速度超過を判断する基準が異なります。
さらに、パトカーなどが速度違反を取り締まるために違反車両を追跡する場合には、道路交通法第41条第2項により、最高速度に関する規定が適用されません。
緊急走行中でも安全運転義務は免除されない
緊急車両にはさまざまな交通ルールの特例が認められていますが、安全運転義務まで免除されるわけではありません。
道路交通法第70条では、車両の運転者に対して、道路や交通の状況に応じて他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転することを義務付けています。
この規定は、緊急走行中の緊急車両でも変わりません。
そのため、赤信号での交差点への進入や最高速度などの特例が認められていても、周囲の安全を十分に確認せず事故を起こせば、緊急車両側の責任が認められることがあります。
実際に先ほど紹介した千葉地方裁判所の判例でも、救急車の運転者が赤信号の交差点へ進入する際の安全確認を怠ったとして、刑事責任を問われています。
緊急車両が接近してきたときに一般車が守るべき交通ルール
道路交通法第40条では、交差点やその付近にいる場合と、それ以外の場所にいる場合で、一般車が取るべき対応を定めています。
緊急車両が後方から接近してきたときに慌てて事故を起こさないためにも、正しい交通ルールを確認しておきましょう。
- 交差点付近では交差点を避けて道路の左側に寄って一時停止する
- 交差点以外では道路の左側に寄って進路を譲る
- 一方通行では状況によって道路の右側に寄って進路を譲る
交差点付近では交差点を避けて道路の左側に寄って一時停止する
道路交通法第40条第1項では、交差点またはその付近で緊急自動車が接近してきたときは、交差点を避けて道路の左側に寄り、一時停止しなければならないと定めています。
すでに交差点内にいる場合は、その場で停止すると緊急車両の通行を妨げるおそれがあります。
そのため、周囲の安全を確認しながら交差点の外まで進み、道路の左側に寄って停止しましょう。
交差点以外では道路の左側に寄って進路を譲る
道路交通法第40条第2項では、緊急自動車が接近してきたときは、道路の左側に寄って進路を譲らなければならないと定めています。
交差点付近とは異なり、必ず一時停止しなければならないわけではありません。
左側へ寄って徐行するなど、緊急車両が安全に通過できるように進路を空ければ問題ありません。
ただし、急な進路変更や急ブレーキは周囲の車との事故につながるおそれがあります。
後方や周囲の状況を確認しながら、安全に左側へ寄って進路を譲りましょう。
一方通行では状況によって道路の右側に寄って進路を譲る
一方通行の道路でも、原則として道路の左側に寄って緊急車両へ進路を譲ります。
ただし、道路交通法第40条では、一方通行の道路で左側に寄ることによって緊急車両の通行を妨げる場合は、道路の右側に寄ることが認められています。
たとえば、道路の左側に駐車車両や工事区間などがあり、左側へ寄るとかえって緊急車両が通過できるスペースを確保できない状況では、右側へ寄って進路を空けましょう。
緊急車両を避けたことで交通事故が発生した場合の責任
緊急車両へ進路を譲ろうとして、別の車と衝突したり、ガードレールなどにぶつかったりすることも考えられます。
緊急車両を避けるための行動だったとしても、発生した事故について必ず緊急車両側が責任を負うわけではありません。
一般車の避け方や周囲の交通状況、緊急車両の走行方法などを踏まえて責任を判断します。
緊急車両を避けた際に発生する主な事故ごとに、誰が責任を負うのかを解説します。
- 緊急車両を避けて別の車と衝突した場合
- 緊急車両を避けて壁やガードレールなどに衝突した場合
- 緊急車両の接近によって急停止して追突された場合
緊急車両を避けて別の車と衝突した場合
緊急車両へ進路を譲るために車線変更や左側への移動をした際、隣を走る車などと衝突した場合は、基本的に衝突した車同士の責任が問題になります。
一般車には緊急車両へ進路を譲る義務がありますが、そのために周囲の安全確認をせず進路変更してよいわけではありません。
一方、緊急車両が著しく接近して進路を譲るよう迫ったなど、緊急車両の走行方法が事故の発生に影響していれば、緊急車両側の責任が問題になることもあります。
緊急車両を避けて壁やガードレールなどに衝突した場合
緊急車両へ進路を譲るために道路脇へ寄り、壁やガードレールなどに衝突した場合は、基本的に一般車側の単独事故として扱われます。
一般車には緊急車両へ進路を譲る義務がありますが、壁などに衝突してまで進路を空ける義務があるわけではありません。
ただし、緊急車両が異常に接近してきたため衝突を避けようとして壁にぶつかったなど、緊急車両の走行と単独事故との間に因果関係が認められれば、緊急車両側へ損害賠償を請求できることもあります。
緊急車両の接近によって急停止して追突された場合
後続車には、前方車が停止しても安全に対応できる車間距離を保ち、前方の状況に注意して走行する義務があります。
また、緊急車両が接近している状況では、前方車が減速・停止して進路を譲ることも想定できるでしょう。
そのため、緊急車両へ進路を譲るために必要な停止を適切な方法で行ったにもかかわらず追突されたのであれば、停止した車に過失が認められず、停止車0:後続車100となることがあります。
一方、緊急車両との距離に余裕があるにもかかわらず突然急ブレーキをかけたなど、停止方法に問題があれば、停止した車にも過失が認められる可能性があります。
関連記事:追突事故された・起こしたときの対応|請求できる損害賠償や加害者の責任を解説
緊急車両との交通事故で弁護士に相談したほうがいいケース
緊急車両との交通事故では、一般車同士の事故とは異なる交通ルールが適用されるため、過失割合の判断が複雑になることがあります。
自分だけで対応するのが難しいと感じた場合は、交通事故に詳しい弁護士への相談を検討しましょう。
特に弁護士へ相談したほうがいい主なケースを解説します。
- 提示された過失割合に納得できない
- 慰謝料などの損害賠償額を増額したい
- 緊急車両を避けたことで別の交通事故が発生した
- 示談交渉や損害賠償請求の負担を減らしたい
提示された過失割合に納得できない
緊急車両との交通事故は、一般車同士の事故よりも過失割合の判断が複雑になりがちです。
緊急走行中の緊急車両との事故では、一般車側の過失が大きい基本過失割合から検討が始まることも多いため、提示された割合に納得できないのであれば、事故状況をもとに適切な過失割合を主張する必要があります。
ただし、基本過失割合を自分だけの力で修正するのは簡単ではありません。
交通事故に詳しい弁護士へ相談すれば、事故状況や証拠、過去の判例などをもとに適切な過失割合を判断し、一般車側に不利な過失割合が提示されている場合は、その修正を求めて交渉してもらえます。
慰謝料などの損害賠償額を増額したい
交通事故の慰謝料には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの算定基準があります。
自賠責基準は自賠責保険で用いられる基準、任意保険基準は各保険会社が独自に設定している基準です。
一方、弁護士基準は過去の裁判例をもとにした基準で、一般的に3つのなかで最も高額になります。
相手側から提示される慰謝料は、自賠責基準や任意保険会社独自の基準で計算されていることがあり、弁護士基準で計算すると増額できるでしょう。
弁護士へ依頼すれば、弁護士基準をもとに慰謝料を算定し、休業損害や逸失利益なども含めて適切な損害賠償額を請求してもらえます。
そのため、提示された金額に納得できない場合は、示談に応じる前に弁護士へ相談しましょう。
緊急車両を避けたことで別の交通事故が発生した
緊急車両と直接衝突していない事故では、緊急車両の走行が原因で事故が発生したことを証明する必要があるためです。
たとえば、緊急車両を避けようとして壁に衝突しただけでは、運転操作を誤った単独事故と判断される可能性があります。
緊急車両がどの程度接近していたのか、どのような走行をしていたのか、その状況で回避行動が必要だったのかなどを明らかにし、事故との因果関係を示さなければなりません。
弁護士へ依頼すれば、ドライブレコーダーや防犯カメラ、事故現場の状況などから因果関係を検討し、緊急車両側に責任があると判断できる場合は、国や自治体などへの損害賠償請求を進めてもらえます。
示談交渉や損害賠償請求の負担を減らしたい
事故後は治療や仕事への復帰などに対応しながら、過失割合や損害額について相手側とやり取りしなければなりません。
さらに、必要な資料をそろえたり、相手側から提示された内容を確認したりする必要もあり、大きな負担になります。
弁護士へ依頼すれば、相手側との連絡や過失割合の交渉、損害賠償額の計算、必要な手続きなどを任せられます。
事故後の対応にかかる時間や精神的な負担を減らし、治療や仕事、日常生活に専念したい場合にも、弁護士への依頼を検討しましょう。
緊急車両との交通事故に関するよくある質問
緊急車両との交通事故に関するよくある質問を紹介します。
- 緊急走行中のパトカーと事故を起こしたらどうなる?
- 緊急車両は交通事故を起こしても運転を継続できる?
- 救急車を避けたことで事故を起こした場合は誰の責任?
- 緊急車両と事故を起こした場合の過失割合は?
緊急走行中のパトカーと事故を起こしたらどうなる?
緊急走行中のパトカーと事故を起こした場合も、基本的には通常の交通事故と同じです。
まず安全な場所に停車し、負傷者がいれば救護します。
事故を起こしたパトカーに警察官が乗っていても、その警察官だけで事故処理を完結させるのではなく、別の警察官が現場に来て事故状況の確認などを行います。
そのため、自分から改めて110番する必要があるかは現場の警察官に確認し、必要に応じて通報してください。
また、相手がパトカーであっても、ドライブレコーダーの映像や事故現場の写真など、自分でも証拠を残しておくことが大切です。
緊急車両は交通事故を起こしても運転を継続できる?
通常、交通事故を起こした運転者には、道路交通法第72条に基づいて負傷者の救護や警察への報告などをする義務があります。
ただし、緊急自動車の運転者が業務のために引き続き運転する必要がある場合は、ほかの乗務員に負傷者の救護や警察への報告など必要な措置を行わせたうえで、運転を続けることが認められています。
そのため、緊急車両だから事故後の対応をせずに立ち去れるわけではなく、現場に残る乗務員などが必要な措置を引き継ぐことが前提です。
実際の救急活動では、事故の状況や車両の安全性、搬送中の傷病者の状態などを確認し、必要に応じて応援の救急隊を要請するなどの対応が取られます。
救急車を避けたことで事故を起こした場合は誰の責任?
進路を譲る際に別の車と衝突したのであれば、基本的には衝突した車同士の運転状況をもとに過失割合を判断します。
ただし、救急車が異常に接近してきたため回避行動を取らざるを得なかったなど、救急車の走行と事故との因果関係が認められれば、救急車側にも責任が認められることがあります。
緊急車両と事故を起こした場合の過失割合は?
交差点で緊急走行中の緊急車両と一般車が衝突した場合、基本過失割合は一般車80:緊急車両20です。
ただし、サイレンや赤色警光灯の使用状況、双方の速度、緊急車両を認識できたタイミング、一般車が適切に進路を譲っていたかなどによって過失割合は変わります。
まとめ
急車両との交通事故では、一般車同士の事故とは異なる交通ルールを踏まえて過失割合を判断します。
交差点で緊急走行中の緊急車両と一般車が衝突した場合は、一般車80:緊急車両20が基本です。
ただし、サイレンや赤色警光灯の使用状況、交差点への進入速度、安全確認の状況などによって過失割合は変わります。
緊急車両だからといって、常に一般車より責任が軽くなるわけではありません。
提示された過失割合に納得できない場合や、国・自治体などとの損害賠償交渉が必要な場合は、交通事故に詳しい弁護士へ相談しましょう。
事故状況や証拠を確認したうえで、適切な過失割合や損害賠償額を判断してもらえます。
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