
認知症の人が起こした交通事故では、認知症の程度によって本人に損害賠償責任が認められない可能性があります。
もちろん、認知症だからといって、本人が交通事故の損害賠償責任を負わなくなるわけではありません。
ただし、認知症の程度によって責任能力がないと判断された場合は、本人以外の人が責任を負ったり、本人や家族などへ損害賠償を請求できなかったりする可能性があります。
また、相手の記憶が曖昧で事故状況についての供述が変わり、過失割合をめぐってトラブルになることも考えられるでしょう。
本記事では、事故相手が認知症だった場合に誰が損害賠償責任を負うのか、過失割合や利用できる保険について解説します。
供述が曖昧な場合の対処法や弁護士へ相談するメリットも紹介しますので、参考にしてください。
・事故相手が認知症の場合の損害賠償責任は、認知症でも責任能力があれば本人が責任を負う、本人に責任能力がなければ家族などが責任を負う、本人や家族などに損害賠償責任を問えない場合がある
・事故相手が認知症だった場合の過失割合の決め方は、別冊判例タイムズを参考に基本過失割合を確認する、修正要素を考慮・調整する、当事者双方の主張から事故状況を確認する、客観的な証拠を確認する
・事故相手が認知症で供述が曖昧な場合の対処法は、自分の記憶が鮮明なうちに事故状況を整理する、相手の供述が変わった場合は記録する、弁護士へ相談する
事故相手が認知症だと通常の交通事故と何が違う?
事故相手が認知症でも、警察への通報や保険会社への連絡など、事故直後の基本的な対応は通常の交通事故と変わりません。
一方、認知症の程度によっては、本人に損害賠償責任を問えない可能性があります。
また、記憶障害などによって事故当時の状況を正確に説明できず、双方の主張が食い違うことも考えられるでしょう。
事故相手が認知症の場合に通常の交通事故と異なる点を解説します。
- 損害賠償責任を負う人が変わる可能性がある
- 相手の供述が曖昧で事故状況の確認が難しくなる
損害賠償責任を負う人が変わる可能性がある
通常の交通事故では、故意や過失によって事故を起こした運転者が損害賠償責任を負うのが基本です。
しかし、事故相手が認知症の場合は、本人の責任能力によって誰が賠償責任を負うのかが変わる可能性があります。
民法第713条では、精神上の障害によって自分の行為の責任を判断する能力を欠いていた場合、原則として本人は損害賠償責任を負わないと定められています。
認知症であっても一律に責任能力が否定されるわけではなく、事故当時の認知症の程度などはんだんされるのです。
本人に責任能力がなければ、民法第714条に基づいて監督義務者などが責任を負う可能性もあります。
ただし、家族だからという理由だけで当然に損害賠償責任を負うわけではありません。
相手の供述が曖昧で事故状況の確認が難しくなる
事故相手が認知症の場合は、記憶障害などの影響によって事故当時の状況を正確に説明できない可能性があります。
例えば、事故直後には信号が赤だったと話していたにもかかわらず、後日になると青だったと説明するなど、供述内容が変わることも考えられるでしょう。
また、事故が起きた場所や車の動き、衝突するまでの経緯そのものを覚えていないことも少なくありません。
交通事故では、当事者双方の供述も事故状況を確認するための重要な情報です。
相手の供述が曖昧だったり何度も変わったりすれば、どのように事故が発生したのか判断するのが難しくなり、過失割合をめぐって争いになる可能性があります。
事故相手が認知症の場合の損害賠償責任と保険
事故相手が認知症の場合、誰に損害賠償を請求できるのかは、事故当時に本人の責任能力があったかどうかによって変わります。
責任能力の有無と利用できる保険について解説します。
- 認知症でも責任能力があれば本人が責任を負う
- 本人に責任能力がなければ家族などが責任を負う
- 本人や家族などに損害賠償責任を問えない場合がある
認知症でも責任能力があれば本人が責任を負う
事故相手が認知症でも、事故当時に責任能力が認められれば、本人が交通事故によって生じた損害を賠償する責任を負います。
責任能力とは、自分の行為によってどのような結果が生じるのかを理解し、その責任を判断できる能力です。
認知症と診断されているという事実だけで、責任能力がないと判断されるわけではありません。
認知症が重度で、自分の行為や結果を十分に理解できない状態だった場合は、責任能力が否定されることもあるでしょう。
自賠責保険や任意保険から補償を受ける
認知症の本人に責任能力がある場合は、通常の交通事故と同じように、相手が加入している自賠責保険や任意保険から補償を受けます。
相手が任意保険に加入していれば、対人賠償保険から治療費や慰謝料、休業損害など、対物賠償保険から車の修理費などが支払われるのが一般的です。
補償対象となる事故であれば、相手が認知症だからという理由だけで任意保険を利用できなくなるわけではありません。
また、人身事故では相手の自賠責保険から補償を受ける方法もあります。
傷害による損害は被害者1人につき120万円、後遺障害は等級に応じて最大4,000万円、死亡事故では最大3,000万円が支払限度額です。
相手が認知症でも、保険を利用できれば本人から直接賠償金を回収する必要は基本的にありません。
保険を利用できなければ本人へ直接請求する
認知症の本人に責任能力がある場合は、通常の交通事故と同じように、相手が加入している自賠責保険や任意保険から補償を受けます。
相手が任意保険に加入していれば、対人賠償保険から治療費や慰謝料、休業損害など、対物賠償保険から車の修理費などが支払われるのが一般的です。
補償対象となる事故であれば、相手が認知症だからという理由だけで任意保険を利用できなくなるわけではありません。
また、人身事故では相手の自賠責保険から補償を受ける方法もあります。
傷害による損害は被害者1人につき120万円、後遺障害は等級に応じて最大4,000万円、死亡事故では最大3,000万円が支払限度額です。
相手が認知症でも、保険を利用できれば本人から直接賠償金を回収する必要は基本的にありません。
関連記事:被害者請求とは?メリット・デメリットや手続きの流れ、弁護士に依頼するメリットを解説
本人に責任能力がなければ家族などが責任を負う
認知症の程度が重く、事故当時の本人に責任能力がなかった場合は、本人が原則として損害賠償責任を負わない可能性があります。
この場合、民法第714条に基づき、本人を監督する法定の義務を負う人が損害賠償責任を負うことがあります。
また、法定の監督義務者に該当しなくても、本人との関係や日常的な関わり方などから、監督義務者に準ずる人として責任を問われることもあるでしょう。
ただし、認知症の人の配偶者や子どもだからという理由だけで、当然に責任を負うわけではありません。
実際にどの程度本人を監督していたのか、監督できる状況だったのかなど、個別の事情から判断されます。
任意保険から補償を受けられる場合がある
認知症の本人に責任能力がなくても、家族などに監督義務者として損害賠償責任が認められた場合は、任意保険から補償を受けられる可能性があります。
任意保険のなかには、被保険者やその家族が責任無能力者を監督する立場として損害賠償責任を負った場合に、補償の対象となる商品があります。
契約内容によっては、家族が自己負担で賠償金を支払うのではなく、保険から被害者への賠償を受けることが可能です。
ただし、すべての任意保険で家族の監督義務者責任が補償されるわけではありません。
誰が被保険者になっているのか、どのような事故が補償対象なのかは契約によって異なります。
人身事故では自賠責保険から補償を受けられる場合がある
認知症の本人に責任能力がなくても、人身事故であれば自賠責保険から補償を受けられる場合があります。
自賠法では、車を自己のために運行の用に供する人に運行供用者責任が定められています。
そのため、認知症の運転者本人に民法上の責任能力がなくても、車の所有者や管理状況などによっては、家族などに運行供用者責任が認められるでしょう。
例えば、家族が所有・管理している車を認知症の本人が運転して事故を起こした場合、家族が運行供用者に該当すれば、自賠責保険から被害者の人身損害について補償を受けられる可能性があります。
本人や家族などに損害賠償責任を問えない場合がある
認知症の程度によって本人に責任能力がないと判断されても、必ず家族などへ損害賠償を請求できるわけではありません。
前述したように、家族というだけで当然に民法上の監督義務者となるわけではなく、本人との関係や生活状況、実際の監督状況などから個別に判断されます。
また、監督義務者に該当しても、監督義務を怠らなかった場合などは責任を負わない可能性があります。
そのため、本人に責任能力がなく、家族などにも損害賠償責任が認められなければ、加害者側へ直接賠償を求めることはできません。
人身傷害保険を利用する
本人や家族などに損害賠償責任を問えない場合でも、自分が人身傷害保険に加入していれば、けがによる損害について補償を受けられる可能性があります。
人身傷害保険は、自分や同乗者が交通事故で死傷した場合に、契約で定められた基準に基づいて損害を補償する保険です。
治療費や休業損害、精神的損害、後遺障害による逸失利益などが補償対象になります。
基本的に自分の過失割合にかかわらず、契約上の保険金額を上限として実際の損害額に応じた保険金を受け取れるのが特徴です。
そのため、認知症の加害者本人に責任能力がなく、家族などにも賠償責任を問えない事故でも、被害者側の損害をカバーする手段になります。
車両保険を利用する
本人や家族などに車の修理費を請求できない場合は、自分の車両保険を利用できる可能性があります。
車両保険は、交通事故によって自分の車が損傷した場合に、修理費などを補償する保険です。
認知症の加害者側から損害賠償を受けられない場合でも、事故が契約上の補償対象であれば保険金を受け取れます。
ただし、車両保険を利用すると、原則として翌年の等級が下がり、その後の保険料が高くなります。
また、契約に免責金額が設定されていれば、修理費の一部は自己負担です。
無保険車傷害保険を利用する
無保険車傷害保険は、相手が任意保険に加入していない場合や、加入していても十分な補償を受けられない場合などに、被害者側の保険から補償を受けるための保険です。
ただし、一般的な無保険車傷害保険では、事故によって被害者が死亡した場合や後遺障害が残った場合などが主な補償対象です。
けがをして治療したものの後遺障害が残らなかった場合や、車の修理費などは基本的に補償されません。
また、認知症の本人に責任能力がない事故で利用できるかどうかは、保険契約の約款や事故状況によって異なります。
本人や家族などから賠償を受けられない場合は、自分の保険会社へ事故状況を伝え、無保険車傷害保険の対象になるか確認しましょう。
認知症の人が起こした交通事故の事例
実際の事故でも、認知症の種類や程度、事故当時の判断能力などによって判断が分かれています。
認知症でも運転者の過失が認められた事例がある一方、刑事事件で不起訴となった事例もあります。
認知症の人が起こした交通事故の事例を見ていきましょう。
- 前頭側頭型認知症のタクシー運転手に過失が認められた事例
- アルツハイマー型認知症の運転手が不起訴になった事例
前頭側頭型認知症のタクシー運転手に過失が認められた事例
大阪市内で、前頭側頭型認知症を患っていた個人タクシー運転手が複数の事故を起こし、死傷者が出た事例です。
裁判では、認知症の影響によって事故を回避する能力が失われていたのかが大きな争点となりました。
【事故の内容】
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【事故の結果】
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弁護側は、認知症によって安全に停止する能力が失われていたため、過失はないと主張しました。
しかし、裁判所は事故直前まで赤信号で停止できていたことなどから、必要な運転能力は失われていなかったと判断しています。
認知症であっても一律に責任が否定されるわけではなく、事故当時の認知能力や運転状況などから個別に判断されることが分かる事例です。
アルツハイマー型認知症の運転手が不起訴になった事例
横浜市で、当時88歳の男性が運転する軽トラックが登校中の小学生の列に衝突した事故です。
男性は事故後の精神鑑定でアルツハイマー型認知症と判明し、最終的に不起訴となりました。
【事故の内容】
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【事故の結果】
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精神鑑定などの結果、男性は認知症や長時間の運転によって、適切に車を操作したり運転を中止したりする判断能力を失っていた可能性が否定できないとされました。
そのため、検察は事故を回避するための注意義務違反を認定するのは難しいと判断しています。
ただし、認知症なら事故を起こしても不起訴になるという意味ではなく、症状や事故当時の状態などを個別に判断した事例です。
事故相手が認知症だった場合の過失割合の決め方
事故相手が認知症でも、それだけを理由に過失割合が高くなったり低くなったりするわけではありません。
基本的には、事故の状況に応じて通常の交通事故と同じように過失割合を判断します。
- 別冊判例タイムズを参考に基本過失割合を確認する
- 修正要素を考慮して過失割合を調整する
- 当事者双方の主張から事故状況を確認する
- ドライブレコーダーなどの客観的な証拠を確認する
- 双方が話し合って最終的な過失割合を決める
別冊判例タイムズを参考に基本過失割合を確認する
交通事故では、まず別冊判例タイムズを参考に基本過失割合を確認するのが一般的です。
別冊判例タイムズとは、過去の裁判例などをもとに、交通事故の類型ごとの基本過失割合をまとめた書籍です。
追突事故や交差点での事故、右折車と直進車の事故など、事故のパターンごとに基本となる過失割合が示されています。
この段階では、事故相手が認知症かどうかは基本的に関係ありません。
まずは実際に起きた事故と近いパターンを探し、通常の交通事故と同じように基本過失割合を確認します。
修正要素を考慮して過失割合を調整する
別冊判例タイムズを参考に基本過失割合を確認したら、事故ごとの修正要素を考慮して割合を調整します。
修正要素とは、速度違反や合図の有無、著しい前方不注意など、基本過失割合を増減させる個別の事情です。
例えば、基本過失割合が50対50の事故でも、一方に速度違反などがあれば、その程度に応じて過失割合が修正されます。
事故相手が認知症の場合でも、認知症という診断そのものを理由に過失割合を増減させるわけではありません。
実際にどのような運転をしていたのかが重要です。
認知症の影響によって信号を見落としたり、通常では考えにくい運転操作をしたりしていた場合は、その具体的な行為が事故類型に応じた修正要素に該当するかを確認します。
当事者双方の主張から事故状況を確認する
交通事故では、当事者双方の主張を聞いて事故状況を確認するのが一般的です。
それぞれに言い分があるため、一方の主張だけで過失割合を決めるのではなく、双方の説明を照らし合わせながら判断します。
ただし、双方の主張が同じように扱われるわけではありません。
事故状況と矛盾していないか、説明に一貫性があるかなどを確認し、客観的に見てどちらの主張に信用性があるのかを判断します。
事故相手が認知症の場合、事故直後と後日で説明が変わったり、事故当時の状況をほとんど覚えていなかったりすることもあるでしょう。
このような供述は、事故状況を判断する際に信用性が低いと評価される可能性があります。
ドライブレコーダーなどの客観的な証拠を確認する
ドライブレコーダーには、信号の色や車両の動き、衝突するまでの経緯などが記録されている場合があります。
そのほか、事故現場周辺の防犯カメラや目撃者の証言、車両の損傷箇所、現場に残ったタイヤ痕なども判断材料です。
特に事故相手が認知症で供述が曖昧な場合は、本人の記憶だけを頼りに事故状況を判断するのが難しいでしょう。
相手の説明が途中で変わったとしても、映像などが残っていれば、実際に何が起きたのかを客観的に確認できます。
証拠から事故状況を明らかにできれば、基本過失割合や修正要素を判断する際にも役立ちます。
関連記事:ドライブレコーダーは事故の証拠になる?役立つ場面や事例を解説
双方が話し合って最終的な過失割合を決める
基本過失割合や修正要素、当事者の主張、客観的な証拠などを確認したうえで、最終的な過失割合を決めます。
一般的には、双方が任意保険に加入していれば、それぞれの保険会社が事故状況を確認しながら過失割合について交渉します。
例えば、相手側の保険会社が70対30を主張し、自分側が80対20を主張している場合は、事故の証拠や過去の裁判例などをもとに話し合いを進める流れです。
話し合いで合意できなければ、交通事故紛争処理センターなどのADRを利用したり、最終的に裁判で過失割合を争ったりする方法もあります。
関連記事:交通事故の過失割合に納得いかないときは?対処法や決め方をわかりやすく紹介
事故相手が認知症で供述が曖昧な場合の対処法
事故相手が認知症の場合、事故当時の記憶が曖昧だったり、時間が経つにつれて供述内容が変わったりする可能性があります。
自分の主張を正確に伝えるためにも、事故直後から記録や証拠を残しておくことが大切です。
相手の供述が曖昧な場合の対処法を紹介します。
- 自分の記憶が鮮明なうちに事故状況を整理する
- 相手の供述が変わった場合は記録する
- 弁護士へ相談する
自分の記憶が鮮明なうちに事故状況を整理する
事故相手が認知症の場合、相手の供述がどこまで正確なのか判断できないことがあります。
しかし、自分の記憶まで曖昧になってしまえば、自分の主張が正しいと示すのも難しくなります。
事故の記憶は時間が経つほど薄れていくため、事故後できるだけ早い段階で覚えている内容を書き留めておきましょう。
記録する内容を自分で取捨選択する必要はありません。
事故前後の車の動きや信号の色、相手が話していた内容、事故直後に気付いたことなど、覚えている内容をできるだけ細かく残しておくのがおすすめです。
一見すると事故に関係なさそうな情報でも、あとから重要な材料になる可能性があります。
必要な情報かどうかは保険会社や弁護士などが判断できるため、まずは覚えている内容を幅広く記録しておきましょう。
相手の供述が変わった場合は記録する
交通事故の状況を判断するうえで、供述に一貫性があるかどうかは重要です。
事故直後から同じ内容を説明していれば、供述の信用性を判断する材料の一つになります。
反対に、事故直後と後日で供述が変わったり、以前の説明と矛盾する内容を話したりすれば、供述の信用性が疑われる可能性があります。
認知症の影響で記憶が曖昧になっている場合は、時間の経過とともに説明が変わることも考えられるでしょう。
相手の供述が変わったときは、いつ、どのような説明をしていたのか記録しておくことが大切です。
メールやメッセージなどのやり取りも削除せず保存しておきましょう。
弁護士へ相談する
認知症が関係する交通事故では、相手の供述が曖昧になるだけでなく、本人に責任能力があるのか、家族などへ損害賠償を請求できるのかといった問題も生じます。
利用できる保険や適切な過失割合について判断するにも、専門的な知識が必要です。
交通事故に詳しい弁護士であれば、事故状況や相手の認知症の程度などを確認し、誰にどのような損害賠償を請求できるのか判断してもらえます。
保険会社との示談交渉や過失割合の交渉も任せられるため、自分で対応する負担を減らせるでしょう。
事故相手が認知症なら弁護士への相談がおすすめ
事故相手が認知症の場合は、通常の交通事故にはない問題が生じる可能性があります。
特に本人の責任能力が争われると、誰に損害賠償を請求すればよいのか判断するだけでも専門的な知識が必要です。
交通事故に詳しい弁護士へ相談すれば、認知症特有の問題を含めて事故対応を任せられます。
弁護士へ相談するメリットを紹介します。
- 責任能力を判断してもらえる
- 弁護士基準で損害賠償を請求できる
- 適切な過失割合になるよう交渉してもらえる
- 裁判に発展しても対応してもらえる
- 弁護士費用特約を利用すれば費用の負担を抑えられる
責任能力を判断してもらえる
事故相手が認知症の場合、損害賠償を請求するうえで重要になるのが、事故当時に本人の責任能力があったかどうかです。
認知症と診断されているだけでは、責任能力の有無を判断できません。
認知症の程度や事故当時の言動、運転状況、医療記録など、さまざまな事情を確認する必要があります。
弁護士へ相談すれば、これらの情報をもとに本人へ損害賠償責任を問える可能性があるのか、法的な観点から検討してもらえます。
本人への請求が難しい場合には、家族などの監督義務者や運行供用者へ責任を問える可能性についても確認してもらえるでしょう。
弁護士基準で損害賠償を請求できる
交通事故でけがをした場合、慰謝料の算定には自賠責基準や任意保険基準、弁護士基準などがあります。
このうち弁護士基準は、過去の裁判例をもとにした基準で、一般的に自賠責基準や任意保険基準よりも慰謝料が高額です。
弁護士へ依頼すれば、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などについて、弁護士基準をもとに相手側へ請求してもらえます。
また、休業損害や逸失利益なども含め、事故によって生じた損害に請求漏れがないか確認してもらえることもメリットです。
適切な過失割合になるよう交渉してもらえる
交通事故では、過失割合によって受け取れる損害賠償額が変わります。
自分にも過失が認められれば、その割合に応じて損害賠償額が減額されるため、適切な過失割合にすることが重要です。
弁護士へ依頼すれば、別冊判例タイムズや過去の裁判例、ドライブレコーダーなどの証拠をもとに、相手側が提示した過失割合が妥当なのか確認してもらえます。
特に事故相手が認知症の場合は、供述が曖昧だったり途中で内容が変わったりする可能性があります。
弁護士であれば、供述の信用性や客観的な証拠を踏まえ、自分に不利な過失割合にならないよう相手側と交渉してくれるでしょう。
関連記事:事故の示談交渉を弁護士に依頼するべき?メリットや判断基準、費用などを解説
裁判に発展しても対応してもらえる
事故相手が認知症の場合、本人の責任能力や家族などの損害賠償責任をめぐって意見が対立し、示談交渉だけでは解決できないことがあります。
示談がまとまらなければ、最終的には裁判で解決を目指すことになります。
保険会社は示談交渉には対応できますが、裁判で被害者本人の代理人として訴訟活動をすることはできません。
自分で裁判を進める場合は、訴状や準備書面の作成、証拠の提出などにも対応する必要があります。
弁護士へ依頼していれば、示談交渉で解決できなかった場合も、そのまま裁判手続きを任せられます。
事故当初から依頼している弁護士であれば、それまでの交渉内容や争点、証拠などを把握しているため、裁判へ移行する際もスムーズです。
弁護士費用特約を利用すれば費用の負担を抑えられる
弁護士費用が気になる場合は、自動車保険などに弁護士費用特約が付いていないか確認しましょう。
弁護士費用特約とは、交通事故で弁護士へ相談・依頼した際にかかる費用を、保険会社が一定額まで負担してくれる特約です。
一般的には、法律相談費用は10万円程度、弁護士費用は300万円程度まで補償されます。
交通事故では弁護士費用が300万円を超えないことも多いため、特約を利用すれば自己負担なしで依頼できる可能性があります。
また、自分の保険に付いていなくても、家族が加入している自動車保険などの特約を利用できる場合もあるため確認してみてください。
関連記事:弁護士費用特約の使い方・利用の流れ|使うべきケースと弁護士の選び方を紹介
事故相手が認知症の場合によくある質問
事故相手が認知症の場合によくある質問を紹介します。
- 事故相手が認知症なら家族に責任はある?
- 事故相手が認知症なら過失割合はどうなる?
- 認知症の飛び出し事故では誰が責任を負う?
事故相手が認知症なら家族に責任はある?
事故相手が認知症でも、家族だからという理由だけで損害賠償責任を負うわけではありません。
認知症の本人に責任能力があれば、原則として事故を起こした本人が損害賠償責任を負います。
そのため、被害者が本人ではなく家族へ自由に請求先を変更できるわけではありません。
一方、本人に責任能力がない場合は、民法第714条に基づき、本人を監督する法定の義務を負う人や監督義務者に準ずる人が責任を負う可能性があります。
事故相手が認知症なら過失割合はどうなる?
事故相手が認知症でも、それだけを理由に過失割合が高くなったり低くなったりするわけではありません。
過失割合は、通常の交通事故と同じように事故の類型から基本過失割合を確認し、速度違反や信号無視などの修正要素を考慮して決めます。
重要なのは認知症という診断ではなく、事故当時にどのような運転をしていたのかです。
認知症の飛び出し事故では誰が責任を負う?
認知症の人が歩行中に突然道路へ飛び出して交通事故が起きた場合でも、必ず車の運転者だけが責任を負うわけではありません。
まず、事故が起きた場所や信号の有無、車の速度、歩行者がどのように道路へ進入したのかなどから双方の過失を判断します。
認知症の歩行者が突然飛び出したのであれば、その行動が過失割合に影響する可能性もあるでしょう。
ただし、認知症の程度が重く、歩行者本人に責任能力がないと判断された場合は、本人が民事上の損害賠償責任を負わない可能性があります。
まとめ
事故相手が認知症でも、認知症という理由だけで損害賠償責任がなくなるわけではありません。
事故当時に責任能力が認められれば、通常の交通事故と同じように本人が責任を負います。
一方、認知症の程度が重く責任能力がない場合は、家族などの監督義務者が責任を負う可能性があります。
ただし、本人にも家族にも責任を問えないことがあるため、その場合は自分の人身傷害保険や車両保険などを利用できないか確認しましょう。
責任の所在や過失割合を自分で判断するのが難しい場合は、交通事故に詳しい弁護士へ相談しましょう。
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