交通事故の過失相殺

過失相殺とは

過失相殺とは、損害賠償を決定するにあたり加害者のみならず被害者の過失(過失割合)を考慮して、賠償額を減額すること。

被害者の過失割合によって賠償額は減額される

実際の交通事故では、その原因を探ると加害者のみが100%悪いということは稀なことであり、その多くは被害者にもなんらかの過失があり、これらが重なり結果不幸なこととなる。過失相殺は、過失割合に応じて、公平に責任を負担するべきという前提に基づいている。

例えば

歩行者 × 自動車

歩行者(被害者)は横断歩道の側を歩いて横切り、通行してきた自動車(加害者)と事故に合い、総額100万円程度の損害を受けたとする。この時、歩行者の過失割合が25%だとすると、加害者が被害者に支払う賠償額は25%減額されて75万円程度となる。

自動車 × 自動車

自動車同士の事故の場合、衝突によって双方ともに損害が発生する。賠償はそれぞれの過失割合に応じて互いに負担し合うこととなる。例えば、信号のない交差点での衝突事故で、A車、B車とも同じくらいのスピード、B車側には一時停止の標識があったと仮定する。A車の損害額は200万円、B車の損害額は100万円。この時の過失割合はA車20%、B車80%だとすると、AはB車の100万円(B車損害)× 20%=20万円を負担。Bは200万円(A車損害)× 80%=160万円をAに対して負担しなければならない。結果、賠償額を精算すると、BがAに対し140万円支払うことになる。

過失相殺と自賠責保険・任意保険

損害賠償請求する際において、過失相殺が適用になるのは主に任意保険の場合である。自賠責保険は、被害者保護という社会的な性格を持つ強制保険であるため、被害者に重度の過失がある場合にしか過失相殺はされない。しかもその割合は、死亡や後遺障害に関しては状況に応じて、20%、30%、50%のいずれか。後遺症を伴わない傷害については20%と決められている。

過失相殺と損益相殺

時として交通事故の被害者が、損害以上に「利益」を得てしまう場合がある。しかし、過失割合の考え方と同様それでは不公平である。そこで、被害者がその事故によりこうむった損害以上の利益を得ないよう定められたのが「損益相殺」。

例えば、事故が被害者の業務中に起き、被害者に労災保険の給付金が支払われる場合、この金額が損害賠償額から控除され、差し引かれることになる。よって、実際に支払われる損害賠償額は通常、過失相殺と損益相殺分が差し引かれた金額となる。ただし、利益とみなされるものにどのようなものがあるのかは、必ずしも明確になっていない。

 

損益相殺の対象となるもの
●自賠責保険金
●健康保険法による給付金
●国民健康保険法による給付金
●厚生年金保険法による給付金
●労災保険法による給付金
●国民年金法による給付金
●国家公務員/地方公務員災害補償法による給付金 など

損害額以上は控除される

損益相殺の対象とならないもの
●生命保険金
●搭乗者傷害保険金
●傷害保険金
●雇用保険失業等給付金
●生活保護給付金 など

過失割合の判定基準

過失割合の判定は簡単なものではなく、それぞれの事故ごとに判定基準がバラバラで難解。そこで、比較的多い事故のケースについては、過去の判例などを参考に一定の基準が作られている。

その基準はまず事故の当事者によって、自動車同士、歩行者と自動車、というように大きくいくつかに分かれる。さらに事故の発生場所によって過失の基本割合が決定される。その上で、事故の発生時刻、被害者の年齢は幾つ?それぞれがどの程度の過失であるか?といったことを考慮し、基本割合に数%の修正を加えて最終的な過失割合が算定される。

過失割合の修正要素

歩行者 × 自動車
歩行者に過失が加算される要素 歩行者の過失が減算される要素
夜間/幹線道路/直前直後横断/ふらふら歩き/横断禁止規制あり
など
住宅・商店街/児童・高齢者/幼児・身体障害者等/集団横断
歩車道の区別なし など
自動車 × 自動車
過失が加減算される要素
見通しの利く交差点/合図なし/制御灯故障/初心者マーク/大型車/一方の明らかな先入/徐行なし/15km以上の速度超過/30km以上の速度超過/右折禁止違反  など

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