賠償責任は車の持ち主にあるのか?
車の保管管理に不備があり盗まれた車が交通事故を起こした場合、その賠償責任は車の持ち主にあるのか?
この点が争われた訴訟の弁論が12月3日、最高裁第三小法廷(林景一裁判長)で行われた。弁論は二審の結論を見直すために必要な手続きで、「盗まれても仕方がない状態で保管されていた」として所有者の責任を認めた二審判決が見直される可能性がある。判決は来年1月21日に言い渡される。
一、二審判決によると、2017年1月の深夜、神奈川県川崎市内にあるA社独身寮に止めてあったワゴン車が、侵入した男に盗まれた。
約5時間後の早朝、盗んだ男の居眠り運転により4台が絡む多重事故が発生。巻き込まれた車を所有する企業2社と、うち1社と自動車保険を契約していた損害保険会社の計3社が、事故を起こした車を所有するA社に修理費用などの支払いを求めて提訴した。
訴訟
訴訟では ①車の管理に問題はなかったか ②盗難と事故の間に因果関係があるか の2点が争われ、①については、一、二審とも車を止めた社員がドアを施錠せず、鍵を運転席の日よけに挟んだままにしていたことから、「管理に過失があった」と認めた。
一方で②の判断は分かれた。一審の東京地裁では、盗難と居眠り運転が事故の原因で「管理の過失が事故を招いたとは言えない」としてA社に責任はないと判断。だが、二審の東京高裁では、車が深夜に盗まれた点を重視、「自動車盗、居眠り運転、事故という一連の流れを予想できた」と認定。
A社に総額約790万円の賠償を命じた。
上告したA社は二審の判断は①も②も誤りだと主張。この日の弁論で、「車は私有地に保管しており、施錠の有無はドアを開けないと分からない。事故は第三者の意図的な窃取と居眠りという重過失によるものだ」と指摘した。
裁判例
過去には同様の裁判例もあり、車の管理状況や盗難から事故までの時間、事故の状況などを検討し、賠償責任の有無を個別に判断している。第三小法廷も今回、二審の妥当性を検討するとみられる。