道交法に「あおり運転」 警察庁方針
警察庁は6日、道路交通法を改正して「あおり運転」を新たに定義し、罰則を設ける方針を固めた。1回の違反で免許を取り消すほか、暴行罪(2年以下の懲役など)より重い罰則を科し、悪質ドライバーの排除を目指すとしている。来年の通常国会への道交法改正案の提出を目指す。
検討案によると、あおり運転を「他の車の通行を妨害する目的で、一定の違反(過度に車間距離を詰めたり、急に進路を変更したりすることなどを想定)により交通の危険を生じさせる恐れのある場合」と規定し、違反した場合は罰則を設ける。「高速道路上(一般道を含む)で他の車を停止させるなど、著しく交通の危険を生じさせた場合」は、さらに重い罰則を科す。
現状この罰則は検討中ということだが、現在の取り締まりで適用されている刑法の暴行罪「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」などとのバランスを考慮して定める方針。行政処分として、1回の摘発で免許取り消しの対象となるよう違反点数を「15点以上」とし、免許を再取得できない欠格期間を1年以上設ける考えだという。
あおり運転の規定 | 罰則 | 運転免許の処分 | |
---|---|---|---|
現行 | 直接の処罰規定なし ※現状は道交法の車間距離保持義務違反や刑法の暴行罪などを適用 |
車間距離保持義務違反は高速道路の場合3月以下の懲役または5万円以下の罰金。暴行罪は2年以下の懲役または30万円以下の罰金 | 最長180日間の免許停止 |
改正案 | ①通行妨害目的で、一定の違反により交通の危険を生じさせる恐れ
②通行妨害目的などにより他の車を停止させるなど著しく交通の危険を生じさせる |
暴行罪などを参考に検討 | 即免許取り消し
最低1年以上は再取得不可 |
これまで警察はあおり運転や危険運転の摘発には、道交法の車間距離保持義務違反や相手への暴力行為があるとして暴行罪などを活用してきた。ただし、繰り返されるあおり運転の報道などにより、あおり運転への関心が高まり、取り締まりが強化された2018年の車間距離保持義務違反は1万3025件と前年の約1・8倍に上昇。さらに自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷の妨害目的運転)での検挙が25件、暴行が24件、傷害が4件などに上った。
今年1~10月の車間距離保持義務違反はすでに約1万2000件に達していることが発表されている。
しかし、現状適用されている車間距離保持義務違反の罰則は、高速道路の場合で「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」で、違反点数も2点にとどまる。政府与党からは「悪質なあおり運転を想定していない現行法による取り締まりには限界がある」として法整備や厳罰化を求める声も多く、警察庁が海外の法制度も参考にしながら検討を続けていた。