警察の取調べで作成される「供述調書」は、刑事事件において重要な書類です。結論からいえば、供述調書は後から変更することは原則できません。
ただし、脅迫や威圧的な取調べによって供述を強要された場合など、取調べに違法性がある場合は後から変更が認められる可能性があります。
本記事では、供述調書とは何か、後から変更できない理由や変更が認められるケースについて解説します。
あわせて、内容を訂正したいときの対処法や、署名・押印する際の注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
・供述調書は原則、後から変更できません(変更できるのは署名・押印の前まで)
・供述調書が後から変更できるのは、脅迫や威圧的な取調べ、不適切な誘導によって供述内容が歪められた、重要な権利が侵害されたなどの場合
・供述調書の内容を後から訂正したいときの対処法は、取調べの違法性を主張する、弁護士に相談する
・供述調書を後から変更しないために意識するポイントは、署名・押印する前に必ず確認する、内容が異なるときはその場で訂正する、すぐに署名・押印しないなど
供述調書とは?
供述調書とは、警察や検察の取調べで話した内容をまとめた書類です。捜査官が質問し、その回答を文章として整理したうえで作成されます。
取調べの最後には、内容を確認したうえで署名・押印を求められるのが一般的です。
- 供述調書は刑事裁判で重要な証拠になる
- 供述調書の「変更」と「訂正申出」「追加供述」の違い
- 供述調書と「供述録取書」の違い
供述調書は刑事裁判で重要な証拠になる
供述調書は、刑事裁判で証拠として扱われることがあります。取調べで話した内容が書面として残るため、事件の事実関係を判断する資料の一つになるためです。
特に、被疑者や参考人の供述内容は、事件の経緯を把握するうえで重要です。そのため、裁判では供述調書の内容が判断材料として利用されます。
もっとも、供述調書は必ずそのまま証拠として採用されるとは限りません。取調べの方法に問題があった場合などは、証拠としての価値が認められないケースもあります。
供述調書の「変更」と「訂正申出」「追加供述」の違い
供述調書の内容に問題がある場合、「変更」「訂正申出」「追加供述」といった方法が考えられます。ただし、それぞれ意味や対応方法は異なります。
| 種類 | 内容 | ポイント |
| 変更 | 作成された供述調書の内容を書き換えること | 署名・押印後は原則できない |
|---|---|---|
| 訂正申出 | 誤りがある部分について訂正を求めること | 取調べの場で申し出ることが多い |
| 追加供述 | 新たな説明や補足をすること | 新しい供述調書が作成されることもある |
このように、供述調書の内容に疑問がある場合でも、すべてが「変更」として扱われるわけではありません。
状況によっては、訂正の申し出や追加供述という形で対応することになります。
供述調書と「供述録取書」の違い
供述調書と似た書類に「供述録取書」があります。どちらも取調べで話した内容を記録する書類ですが、作成する主体や手続きに違いがあります。
| 項目 | 供述調書 | 供述録取書 |
|---|---|---|
| 作成者 | 検察官または司法警察員 | 主に警察官 |
| 内容 | 取調べでの供述をまとめた書面 | 供述内容を記録した書面 |
| 署名・押印 | 原則として求められる | 求められることが多い |
| 裁判での扱い | 証拠として提出されることがある | 供述調書ほど強い証拠とは扱われにくい |
このように、どちらも供述内容を記録する書類ですが、刑事手続きにおける位置付けには違いがあります。
特に供述調書は刑事裁判で証拠として扱われることがあるため、内容をよく確認してから署名・押印することが重要です。
供述調書は後から変更できない
供述調書は、署名・押印をした後に内容を変更することは原則できません。
供述調書は取調べで話した内容を確認したうえで作成される書類であり、署名・押印によってその内容を認めたと扱われるためです。
取調べでは、警察官が読み上げたり、書面を確認する時間が設けられることがあります。このときに内容をよく確認し、事実と異なる部分がないか注意しましょう。
- 供述調書を変更できるのは署名・押印の前まで
供述調書を変更できるのは署名・押印の前まで
供述調書の内容を変更できるのは、署名・押印をする前までです。
取調べでは、警察官が供述内容をまとめた書面を作成し、その内容を確認したうえで署名・押印を求められます。
この確認の段階であれば、内容の訂正や修正を求められます。例えば、発言の趣旨と違う記載がある場合や、事実と異なる内容が書かれている場合です。
供述調書が後から変更できるのは違法性がある場合
供述調書は、署名・押印をした後に内容を変更することは原則できません。しかし、取調べの方法に違法性がある場合は、供述調書の信用性が問題になります。
その結果、裁判で証拠として採用されない場合や、供述内容の信用性が否定されることも少なくありません。供述調書に違法性があると判断されるケースを紹介します。
- 脅迫や威圧的な取調べで供述を強要された場合
- 不適切な誘導によって供述内容が歪められた場合
- 黙秘権など重要な権利が侵害されていた場合
- 長時間の取調べなどで任意性が疑われる場合
脅迫や威圧的な取調べで供述を強要された場合
取調べで脅迫や威圧的な言動があり、その結果として供述を強要された場合は問題になります。任意に話した内容とはいえないためです。
例えば、「このまま認めないと不利になる」「家族にも迷惑がかかる」などと強い圧力をかけられたケースです。
このような状況では、自由な意思で供述したとはいえない可能性があります。
不適切な誘導によって供述内容が歪められた場合
取調べでは、警察官が質問をしながら供述内容を確認していきます。
しかし、質問の仕方によっては、本人の認識とは異なる内容が供述として記録されてしまうことも少なくありません。
例えば、「こういう状況だったのではないか」「普通はこう考えるはずだ」などと前提を決めつけた質問を繰り返され、その流れに沿って回答してしまうケースです。
また、話していない内容が供述調書に記載されている場合もあります。
このように誘導によって供述内容が歪められている場合は、供述の任意性や信用性が問われる問題です。
黙秘権など重要な権利が侵害されていた場合
取調べでは、黙秘権など被疑者の権利が保障されています。黙秘権とは、質問に対して答えない権利のことです。
警察や検察は、取調べの前にこれらの権利を告知する必要があります。
しかし、黙秘権が十分に説明されていなかったり、黙秘すると不利になるかのような説明をされたりする場合があります。
このような状況では、自由な意思で供述したとはいえません。また、弁護士へ相談する権利など、重要な権利が適切に保障されていない場合は違法です。
長時間の取調べなどで任意性が疑われる場合
取調べの時間について、法律で明確な上限時間は定められていません。ただし、長時間にわたる取調べは供述の任意性が疑われる場合があります。
例えば、休憩がほとんどないまま長時間取調べが続いた場合や、深夜まで取調べが行われたケースです。
このような状況では、早く取調べを終わらせたいという心理から、本来の認識とは異なる供述をしてしまう可能性があります。
取調べの時間や方法が不適切であると判断されれば、供述の任意性が問題になります。
供述調書の内容を後から訂正したいときの対処法
供述調書は、署名・押印をした後に内容を変更することは原則できません。
しかし、記載内容に誤りがあると感じた場合や、事実と異なる内容が記録されている場合は、そのままにしておくべきではありません。
供述調書の内容を後から訂正したいときに考えられる対処法を紹介します。
- 警察に訂正したい旨を伝える
- 取調べの違法性を主張する
- 弁護士へ相談する
警察に訂正したい旨を伝える
供述調書の内容に誤りがある場合は、まず警察へ訂正したい旨を伝えることが考えられます。
取調べ後であっても、供述内容について説明を求めたり、誤りを指摘したりすることは可能です。
例えば、「実際に話した内容と違う部分がある」「事実と異なる記載がある」といった点を具体的に伝えます。
内容によっては、追加で事情を聞かれたり、新たな供述が記録されたりすることもあります。
もっとも、一度署名・押印した供述調書の内容を書き換えることは原則できません。そのため、訂正したい内容がある場合は、できるだけ早く警察へ伝えることが重要です。
取調べの違法性を主張する
供述調書を後から変更したい場合は、取調べの中で違法な対応がなかったか思い出してみることが大切です。
取調べの最中は雰囲気に流されてしまい、冷静に判断できないこともあります。
しかし、後から振り返ると「これはおかしかったのではないか」と感じる場面が見つかもしれません。
取調べが終わった後は、警察官の対応や取調べの状況をできるだけ具体的に書き出しておくとよいでしょう。
違和感があったことや印象に残っている出来事を記録しておくと、後で説明するときに役立ちます。
違法かどうかの判断が難しい場合は、弁護士に相談することも検討しましょう。
弁護士へ相談する
供述調書の内容に納得できない場合は、弁護士へ相談することも検討しましょう。
弁護士であれば、取調べの状況や供述調書の内容を確認し、法的に問題がないか判断してくれます。
例えば、取調べの方法に違法性がある可能性がある場合や、供述内容が事実と異なっている場合などです。どのように対応すべきか、具体的なアドバイスをもらえます。
また、弁護士が関与することで、今後の取調べへの対応や刑事手続きの進め方についても助言を受けられます。
一人で判断するのが難しいと感じた場合は、早めに相談しておくと安心です。
供述調書にサインしないとどうなる?
供述調書は、内容を確認したうえで署名・押印を求められるのが一般的です。しかし、記載内容に納得できない場合は、署名を拒否することも可能です。
供述調書に署名しない場合にどうなるのかについて解説します。
- 内容に納得できない場合は署名を拒否できる
- 署名を拒否しても逮捕されるとは限らない
- 捜査が続き別の供述調書が作成されることもある
内容に納得できない場合は署名を拒否できる
供述調書の内容に納得できない場合は、署名を拒否できます。供述調書は、内容を確認したうえで本人が署名・押印することで成立する書類のためです。
例えば、事実と異なる内容が書かれている場合や、自分の発言の趣旨と違う形で記載されている場合です。このような場合は、そのまま署名する必要はありません。
署名・押印をすると、その内容を確認して認めたものとして扱われます。そのため、内容に疑問がある場合は、その場で訂正を求めたり、署名を拒否したりすることが重要です。
署名を拒否しても逮捕されるとは限らない
供述調書への署名を拒否した場合でも、それだけを理由に逮捕されるとは限りません。逮捕が行われるかどうかは、事件の内容や証拠の状況などをもとに判断されるためです。
例えば、逃亡のおそれがある場合や、証拠隠滅のおそれがある場合などは逮捕が検討されることがあります。
一方で、そのような事情がない場合は、在宅のまま捜査が続くケースもあります。
そのため、供述調書の内容に納得できない場合は、無理に署名する必要はありません。
捜査が続き別の供述調書が作成されることもある
供述調書への署名を拒否した場合でも、取調べ自体が終わるとは限りません。捜査はその後も続くことがあります。
例えば、改めて取調べが行われたり、別の形で事情を確認されたりすることがあります。その過程で、新たな供述調書が作成されることもあります。
そのため、一度署名を拒否したとしても、その後の取調べで内容を整理しながら供述することも可能です。納得できる内容であれば、その時点で署名・押印することもあります。
供述調書を後から変更しないために意識するポイント
供述調書は、署名・押印をした後に内容を変更することが原則できません。そのため、取調べの段階で内容をよく確認しておくことが重要です。
供述調書の内容を後から変更する事態を避けるために、取調べの際に意識しておきたいポイントを紹介します。
- 内容に誤りがないか署名・押印する前に必ず確認する
- 事実と異なる記載があればその場で訂正を求める
- 誘導質問に流されないよう注意する
- 納得できない場合はすぐに署名・押印しない
- 答えたくない内容には無理に答えない
内容に誤りがないか署名・押印する前に必ず確認する
供述調書に署名・押印する前は、記載内容を必ず確認することが大切です。取調べで話した内容が、そのまま正しく書かれているとは限らないためです。
供述調書は、警察官が話の内容を整理して文章にしたものです。そのため、言った内容と表現が変わっていたり、意図と違う意味になっていたりすることがあります。
署名・押印をすると、その内容を認めたものとして扱われます。少しでも違和感がある場合は、その場で確認し、必要であれば訂正を求めることが重要です。
事実と異なる記載があればその場で訂正を求める
供述調書の内容に事実と異なる記載がある場合は、その場で訂正を求めることが大切です。取調べの段階であれば、内容の修正を求められます。
例えば、発言の趣旨が違う形で書かれている場合や、話していない内容が記載されている場合です。
このような場合は、そのまま署名するのではなく、訂正してもらう必要があります。
訂正が行われた後に、内容をもう一度確認してから署名・押印することが重要です。少しでも事実と違う部分があれば、そのままにせず確認するようにしましょう。
誘導質問に流されないよう注意する
取調べでは、警察官が質問をしながら供述内容を確認していきます。しかし、質問の仕方によっては、特定の結論へ誘導されてしまうこともあります。
例えば、「こういう状況だったのではないか」といった前提を含んだ質問です。
このような質問に流されてしまうと、自分の認識とは少し違う内容でも「はい」と答えてしまうことがあります。
質問の内容が自分の認識と違う場合は、無理に同意する必要はありません。自分が覚えている事実を、そのまま伝えることが大切です。
納得できない場合はすぐに署名・押印しない
供述調書の内容に納得できない場合は、すぐに署名・押印しないことが重要です。
取調べの場では早く手続きを進めようとする雰囲気になることもありますが、無理に署名する必要はありません。
内容を十分に確認できていない場合や、事実と違う記載があると感じた場合、その場で確認を求めたり、訂正を求めたりすることが大切です。
少しでも疑問がある場合は、落ち着いて内容を確認してから判断するようにしましょう。
答えたくない内容には無理に答えない
取調べでは、すべての質問に必ず答える必要はありません。答えたくない内容については、「答えたくありません」と伝えるか、黙秘しましょう。
刑事手続きでは、黙秘権が認められています。自分に不利な内容については答えないという選択も可能です。
取調べの雰囲気に流されてしまうと、本来は答える必要のない内容まで話してしまうことがあります。
質問に対してどう答えるかは自分で判断できるため、無理に供述する必要はないことを理解しておくことが大切です。
供述調書を後から変更するときによくある質問
供述調書を後から変更するときによくある質問を紹介します。
- 供述調書に押印してしまった場合はどうなる?
- 供述調書を追加で作成することは可能?
- 供述調書は開示請求できる?
- 供述調書を作成した後はどうなる?
供述調書に押印してしまった場合はどうなる?
供述調書に署名・押印をすると、その内容を確認して認めたものとして扱われます。そのため、後から内容を書き換えることは原則できません。
ただし、取調べの方法に違法性がある場合は、供述調書の信用性が問題になります。
また、供述内容に誤りがある場合は、追加の供述を行うことで説明を補足できることもあります。いずれにしても、対応に迷う場合は弁護士へ相談することが重要です。
供述調書を追加で作成することは可能?
一度供述調書を作成した後でも、追加で供述調書が作成されることはあります。取調べが続く中で、新たな事情を説明したり、供述内容を補足したりする場合です。
例えば、後から思い出したことがある場合や、前回の供述では説明が足りなかった部分がある場合です。
このような場合は、追加の供述として新しい供述調書が作成されることがあります。
供述調書は開示請求できる?
供述調書は、基本的に自由に閲覧やコピーができる書類ではありません。捜査段階では、被疑者本人であっても簡単に開示されないことが多いです。
ただし、事件が起訴された場合は、刑事裁判の手続きの中で証拠開示が行われることがあります。この場合、弁護士を通じて供述調書の内容を確認することが可能です。
そのため、供述調書の内容を確認したい場合は、弁護士に相談する方法が一般的です。弁護士が関与することで、刑事手続きの中で内容を確認できます。
供述調書を作成した後はどうなる?
供述調書を作成すると、その内容は事件の捜査資料として扱われます。警察や検察は、供述調書の内容を他の証拠とあわせて検討し、事件の事実関係を整理していくのです。
その後、事件の内容や証拠の状況を踏まえて、検察官が起訴するかどうかを判断します。起訴された場合は、供述調書が刑事裁判で証拠として提出されることもあります。
まとめ
供述調書は、警察や検察の取調べで話した内容をまとめた書類です。署名・押印をすると、その内容を認めたものとして扱われるため、後から変更することは原則できません。
ただし、脅迫や威圧的な取調べ、不適切な誘導など、取調べに違法性がある場合は供述調書の信用性が問題になることがあります。
供述調書を作成する際は、署名・押印する前に内容をよく確認し、事実と異なる記載があればその場で訂正を求めることが大切です。
対応に不安がある場合や、取調べに問題があったと感じる場合は、弁護士へ相談することも検討しましょう。
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